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鈴木 啓文 院長

兵庫医科大学では救命救急センターと消化器外科の分野で研修を積む。

その後、母校の消化器内科に入局し、大学院も修了、医学博士号を取得。

母校の助手、住之江病院の内科部長、有馬温泉病院の副院長を経て、

1997年に鈴木診療所を開業。中学・高校の校医、保育所の園医も行う。

認知症患者さんのサポート医および介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持ち

長田区医療介護サポートセンターの指揮命令者を務める。

外来と在宅医療の職種連携、地域の包括医療を進めている

Q. ​医師を志したきっかけは?

不思議と他の道は

考えなかったです。

 ここは私の育った場所でもあり、もともと祖父がここで運送屋をしていた場所なんです。父が継ぎましたが「今後は大手が中心となっていくから、他の仕事を考えたほうがいい」と。父が憧れていた医学の道を小学生の頃から勧められました。姉も薬剤師になったのでその影響もあるのか、不思議と他の道は考えなかったですね。

 大学院修了後は大学に残り研究者の道に進むことも考えましたが、以前勤務していた住之江区は下町で高齢者が多い地域。育った町と雰囲気がよく似ており、開業医そして地域医療へと気持ちが向いていきました。有馬温泉病院はリハビリに積極的に取り組んでおり、技術と知識を身につけることができました。

 開業した頃、古くから近隣に住む患者さんに祖父のことを知っていると言われることも多かったです。新米の開業医で手際が悪くても、祖父の孫ということで患者さんも我慢してくれた部分もあったかと思うので、ありがたかったです。

Q. ​高齢の患者さんの診療について
  教えてください。

日常生活動作が

低下した方のケア、

サポトにも対応しています

 足腰が弱り通院が困難になるため、慢性疾患のコントロールとともに在宅医療が必要になってきます。介護保険制度の利用で日中はカバーできても、サービスには限りがあります。看取りだけでなく、普段の在宅医療を補うような医療を提供していきたいと考えています。

 また、認知症で食事や着脱衣、排泄、移動などの日常生活動作が低下した方のケア、サポートにも対応しています。開業当初から在宅医療もと考え、実践してきました。

 当時は介護保険制度がなかったので、往診という呼び方で、取り組んでいるところは少なかったです。住之江の町が、そうしたことでお困りの高齢者が多く、状況が似ている自分の町に貢献したいという思いがありました。

Q. ​配慮や工夫をされていることは
  ありますか?

患者さんの背景に

気を配ること

 患者さんの背景に気を配ることキーパーソンを見つけて連絡を取ることを大切にしています。悪くなった時、終の住まいをどこにして誰が面倒を見るのか。元気な方でも身内がいなかったり、疎遠ということもあります。バックボーンをしっかり把握することは重要です。例えばがんの治療をしている患者さんの場合、ご家族や周囲の意向もありますし、ご本人と考えの相違があることも。

 当院ではコミュニケーションをしっかり取ることを心がけています。

Q. ​日々の診療で大切に
  されていることは何ですか?

聴診器をあて、

全身を診ることを大切に

 救命救急の現場と外科にいたこともあり、「緩急自在」が座右の銘です。その上で重視したいのが予防医学。前もって検査をして必要な薬を投与し症状を落ち着かせることができれば、患者さんの負担や通院頻度も減らせるのではと、長年の経験から感じるようになりました。

 当院は電子カルテを導入せず、診療中は患者さんの目をしっかり見て話し、わかりやすく説明するようにしています。カルテの記載の仕方や、時系列のデータの取り方なども工夫しています。高齢の患者さんが多いので、お渡しするものは大きく手書きにしています。

また、必ず聴診器をあてることも大切にしていて、皮膚も診ることができ、変化に気づきやすいのです。聴診器をあてることは全身を診ることにつながります。「診療所」という名にした理由はそこにあり、消化器や胃腸ではなく、何でも見るというのが診療ポリシーです。

Q. ​今後の展望について

多職種間で連携できたら

​良いと思っている

 医療保険や介護保険を利用している方は多いと思いますが、自閉症や知的障害、精神疾患などの人たちに対する障害者医療が気になっています。生活介護の施設は医療関係者を置かなくても良いことになっています。

 ただ、医療に知識がある人がいないと、ご本人が気になる症状があっても言えない場合もあるので、実は病気でも気づきにくいことが懸念されます。認知症の方の医療も心配ですね。

 現在、神戸オレンジチームという認知症初期集中支援チームの依頼で、受診拒否の認知症患者さんを医療へつなげ、介護申請をするための往診をしています。施設もなかなか空きがなく、入れるのは高額な費用のところしかないことも少なくありません。服薬・食事ができないなど生活全般の機能が落ちても、施設に入らずに自宅で可能な限り暮らせるような方法を考えて、多職種間で連携できたら良いと思っています。

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